人魚姫の涙

「パパ……どうして」


突然現れた父親の姿に動揺する紗羅。

大きな目を見開いて、おじさんの顔を見つめた。

すると、ゆっくりと紗羅の方を向いたおじさんが、俺達の前に静かに腰を下ろした。


「大学から、連絡があった」

「大学?」

「紗羅が授業に来ていないと。それを聞いて急いで家に電話したが繋がらない。もちろん紗羅にも電話したけど留守電にしかならなかった」


おじさんの言葉を聞いて、紗羅は気まずそうに下を向いた。


「帰ってみれば、家の中はバタバタ。いろんな人に電話をかけたけど、返事はいつも同じだ」

「――」

「そんな時、写真が部屋に散らばっているのを見つけてね。何故か私の昔の写真だ」


それは、恐らく紗羅がさっき見せてくれた写真の事だろう。

きっと、何かないかと手当たり次第探したのだろう。

そのまま片付けもせずに家を飛び出したのは、紗羅らしいと思った。
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