人魚姫の涙

「真実を――」


おじさんの一言と同時に、部屋の中の空気が薄くなった気がした。

母さんは俺達2人をじっと見つめている。

そして、固く繋がれた俺達の手を見て唇を噛んだ。


「話は私達の大学時代に遡る」


そして、ゆっくり話し出された俺達の物語――。


「知っての通り、私達4人は大学時代はとても仲が良くてね。私と大悟、茜と桜。気が付いたらいつも4人一緒だった」


大悟は俺の父さんの名前。

桜は母さんの名前。

じゃぁ、茜はおじさんの奥さん。

つまりは、紗羅の母親だとされる人。


「他愛もない日々だった、授業を一緒に受けて、サークルへ行って、たまに飲んだりして。楽しい大学生活だった」

「――」

「そんな中、私と桜は次第に心惹かれて、付き合う事になったんだ」

「え? 母さんと、おじさんが?」


衝撃だった、母さんとおじさんが昔付き合っていたなんて。

紗羅も知らなかったのか、驚いたように目を見開いた。


「大学2年の冬だ。お互いに思い合っていた。大悟と茜も祝福してくれた」
< 212 / 344 >

この作品をシェア

pagetop