人魚姫の涙

「幸せな日々だった。こんなにも人を愛したのは、これが初めてだった」

「私も……彼を愛していたわ」


ずっと黙っていた母さんが、そう囁いた。

愛しあっていた?

母さんと、おじさんが?


「私達は大学を卒業したら結婚しようと約束した。だけど、大学卒業式の日、私達は離れ離れになった」

「離れ離れ? どういう事?」


紗羅が今にも泣きだしそうな顔で、おじさんに詰め寄った。

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