人魚姫の涙
互いに体を寄せ合って、零れ落ちそうな星空を見上げる。

静かな世界には、俺達しかいないんじゃないかと錯覚してしまいそうになる。


不安な気持ちを押し込めるように目を閉じて、息を吐く。

すると、ギュッと俺の胸に抱き着いた紗羅を感じて目を開けた。


「成也?」

「ん?」

「私ね、今とっても幸せよ?」


俺の腕枕で寝転ぶ紗羅が、優しく微笑んでそう言った。

真っ青な瞳に星空が映りこんで、キラキラと宝石のように輝いた。


「泣けちゃうくらい、幸せよ」


その言葉を聞いて、反動的に紗羅を抱きしめた。

そしてそのまま、その唇を塞いだ。


「ンッ―――」


真っ白な肌が月明かりのせいで青白く光る。

俺の動きに合わせて聞こえる紗羅の小さな悲鳴。

服を一枚剥ぐ度に、俺の理性が崩壊する。


「紗羅」


〝お前達は兄妹なんだ″


だけど、紗羅を感じる度に、おじさんの言葉が頭の中で響く。

その声を振り払うように頭をブンブンと振った。


「せぃ...…ゃ」


そんな俺を見て、そっと俺の顔を包んだ紗羅。

瞳を潤ませて、薔薇色の唇が動く。
< 262 / 344 >

この作品をシェア

pagetop