人魚姫の涙
散らばっている写真の中の一枚を拾う。

泣きまくっている紗羅の頭を、俺が撫でている。

その姿を見て、思わず笑ってしまいそうになる。

そう言えば、夢の中でも泣いてたなと思って。



紗羅は俺の家のお隣さんで、お互い片親同士だった。

もともと俺の母さんと紗羅の父親が仲良かった事もあって、自然と俺達はいつも一緒にいた。

俺の後ろをいつも一生懸命追いかけてくる紗羅は、俺にとって妹のような存在だった。


フワフワの栗色の髪に、真っ青な瞳。

その容姿はまるでフランス人形のようだったけど、サラの両親は日本人だ。

後から聞いた話、アレは遺伝じゃなくて突然変異だそうだ。


だけど、紗羅は4歳の時に父親の転勤でイタリアに行ってしまった。

きっと今日の夢は、紗羅がイタリアに行ったあの日だ。

真っ赤な夕日が沈む海で、ずっと泣いて『行きたくない』と駄々をこねていた紗羅。



――あれから18年。

俺と同じ年だったから、きっと紗羅も22歳だ。
< 5 / 344 >

この作品をシェア

pagetop