宵の悪魔は裏切り者を拾う




 本当にガキみたいなちっぽけな理由。だが、それはこの男・貴翔にとっては重大なことなんだろうな。親に見向きもされず、兄弟達から見下され、自分を強くみせては誰かが離れることを恐れる弱者。


「だが、俺はここに居る理由はない」
「なんでだよ、俺にはお前が必要なんだってことなんで分からねぇんだよ……」


 盛大な告白をかまされても、どうしろっていうんだ。溜息をついて、部屋を出ようとすれば、ドアが開かないことに気づく。


「……貴翔、お前」
「ここから出れなければ、ずっとここに居るだろ」


 どこの変質者だ、お前は。と言いたくなる行為にもう何も言うまい。抑えきれずに出た溜息に嗤う貴翔。だが、残念。


「甘いな」
「は?」


 右手にある窓はそう大きくはないが、まあ通れるか。ここ3階だけど。窓の存在に気づいた貴翔。


「お前、それ――!」
「残念、もうお前に会うことはないよ貴」


 最後の最後だ、と昔の愛称で呼んでやれば目を見開いて――俺は3階の、大して大きくもない小窓から飛び降りた。


「飛鳥!!」


 そう、アイツが呼んだ気がしたが振り返ることはない。流石に3階から落ちて生きてられる補償はないからな……計算通り、窓の下の植木に落ちた。


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