宵の悪魔は裏切り者を拾う





 スマホをズボンのポケットにしまい、ベンチにもたれかかって眠っている男ーー飛鳥を見る。

「なんで、お前」

 その言葉は、今言っても仕方がない。零れ落ちそうなそれを飲み込んで、飛鳥を担ぎ上げようとした。もちろん、左腕に触れないように。

「っ、ぅ……」
「!?」

 担ぎ上げた途端に、呻き声がして身体が固まる。他にどこか怪我でもしてるのか。そう思い、担ぐのをやめた。やめて、少々恥ずかしいがお姫様抱っこにした。これの方が、負担は少ないから。

「……飛鳥が起きてたら、怒られそう」

 ぽつり、とそう零して男は歩き出す。目指すは、電話の相手の家ーー兼、自宅。電話の相手とは幼馴染で、家賃が浮くからと同居している。

 そもそも、電話相手と同居している自宅は電話相手の叔父からの贈り物のため、家賃がとか、ほぼ関係のない話ではあるけれど。

 その自宅に辿り着くには、騒がしく光がうざったしい繁華街を通らなければならない。そのため、

「え」
「うそ……」

 注目の的になることが、回避できないが仕方ない。担ぎ上げたら、呻き声を上げているんだし。そんな配慮などいざ知らず、眠る飛鳥は後日、自身が噂の対象となることなど知らないのだった。


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