宵の悪魔は裏切り者を拾う





 真夜中、木々の隙間から差す月明かりが一人の男を照らしていた。目立った外傷は無さげだが、明らかに左腕を庇っているように、ベンチに上半身をもたれかけさせている。

 そんな真夜中の公園に、何の気まぐれかこの“街”で有名な男が一人足を踏み入れた。

「……、……は?」

 咥えていた煙草は地面に落ちて。ベンチに上半身をもたれかけさせている男を見て、慌てて駆け寄る。

「え、なん、は?」

 見つけたのは確かに自分。しかし、状況がいまいち掴めなかった。なんで、こんなところに。しかし、今はそんなことはどうでもよくて。
 慌ててスマホを出せば、一番上に表示された相手に電話をかけた。

『……もしもーし?何?』
「アイツ、怪我して公園にいるんだけど」
『は?』

 機械音特有の無機質な音の後に、出たのはいつも聞き慣れている呑気な声。その相手に、脈絡なく話を伝えれば、訝しがる声が返ってきた。当然だ。

『アイツって?』
「飛鳥」
『……は?え?』
「だから、飛鳥」
『……あすかぁ!?』

 そうだって言ってるのに。そう思うも、電話越しの相手のうろたえ具合は凄まじい。さっきの自分と同様だ。

『連れて帰ってこれる!?』
「行ける」
『分かった、ベッド綺麗にしておくから!』

 ぶつり、と切れた機械音に騒がしいと思った。


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