【完】絶えうるなら、琥珀の隙間
「それにしてもあの人が男なんて今でも信じられねーな。お前より女らしいってどういう事だよ」
「うるさいなあ」
怒った様なフリをして軽く小突けば、ミナトは肩を揺らす。
「まあでも、逆に翠様が男で安心したわ」
「へ?」
「女であれだけの強さって、もう俺立場ねえけどよ。男なら納得だわ。あー、でも一生勝てねえんだろうなあ。くっそ、絶対あの時勝てると思ったんだけどな……なんだよあの技、卑怯すぎんだろ」
きっと翠と対峙した時に、素手の翠に剣を取り落とされた事を言っているのだろう。
悔しそうに溜息を吐いたミナトが何だか面白くて、カヤはくすくすと笑った。
「出来ればもう斬り合うのは、あれっきりにしてね」
そう言えば、ミナトは仕方無さそうに、くすりと笑みを零す。
それから、ぽん、とカヤの頭に大きな手のひらを乗せた。
「……戻っても、辛い思いするだけかもしれねえぞ」
どことなく哀愁を感じさせる笑顔だった。
「うん」と頷けば、ミナトの顔に浮かぶ物悲しさが深まる。
「翠様の正妻にも、一生なれないかもしれねぞ」
「うん、分かってる」
カヤは、万遍の笑みを浮かべた。
「それでも私はあの人の隣に居るよ。それがどんな形だって構わない」
迷いなく言い切ると、ミナトが、ふ、と口角を上げた。
「強くなったな」
最後に一度だけゆるりと頭を撫でた指は、カヤの髪を掬いながら、そっと離れて行った。
「よし」
気を取り直したように、ミナトが頷いた。
「琥珀。お前を逃がす」
あまりにも唐突にそんな事を言われたため、カヤは面食らってしまった。
「え……えっ?良いの?でも、どうやって……?」
砦の見張りは以前よりも増えたとミナトは言っていた。
蟻一匹すら通さないような警備の中、一体どうやって逃げると言うのか。
ミナトは、顎に手を当てて考える仕草を見せた。
「俺だけの力だと難しいから……少し協力してもらうか」
誰に?
不安げな表情のカヤに、ミナトは「心配すんな」と何とも晴れ晴れしい笑顔を見せたのであった。
「うるさいなあ」
怒った様なフリをして軽く小突けば、ミナトは肩を揺らす。
「まあでも、逆に翠様が男で安心したわ」
「へ?」
「女であれだけの強さって、もう俺立場ねえけどよ。男なら納得だわ。あー、でも一生勝てねえんだろうなあ。くっそ、絶対あの時勝てると思ったんだけどな……なんだよあの技、卑怯すぎんだろ」
きっと翠と対峙した時に、素手の翠に剣を取り落とされた事を言っているのだろう。
悔しそうに溜息を吐いたミナトが何だか面白くて、カヤはくすくすと笑った。
「出来ればもう斬り合うのは、あれっきりにしてね」
そう言えば、ミナトは仕方無さそうに、くすりと笑みを零す。
それから、ぽん、とカヤの頭に大きな手のひらを乗せた。
「……戻っても、辛い思いするだけかもしれねえぞ」
どことなく哀愁を感じさせる笑顔だった。
「うん」と頷けば、ミナトの顔に浮かぶ物悲しさが深まる。
「翠様の正妻にも、一生なれないかもしれねぞ」
「うん、分かってる」
カヤは、万遍の笑みを浮かべた。
「それでも私はあの人の隣に居るよ。それがどんな形だって構わない」
迷いなく言い切ると、ミナトが、ふ、と口角を上げた。
「強くなったな」
最後に一度だけゆるりと頭を撫でた指は、カヤの髪を掬いながら、そっと離れて行った。
「よし」
気を取り直したように、ミナトが頷いた。
「琥珀。お前を逃がす」
あまりにも唐突にそんな事を言われたため、カヤは面食らってしまった。
「え……えっ?良いの?でも、どうやって……?」
砦の見張りは以前よりも増えたとミナトは言っていた。
蟻一匹すら通さないような警備の中、一体どうやって逃げると言うのか。
ミナトは、顎に手を当てて考える仕草を見せた。
「俺だけの力だと難しいから……少し協力してもらうか」
誰に?
不安げな表情のカヤに、ミナトは「心配すんな」と何とも晴れ晴れしい笑顔を見せたのであった。