危ナイ隣人
「ならもう移しちまうぞ」



軽い口調で、工程を掻っ攫ってしまおうとするナオくん。


待って待って、今日は私がやんなきゃ意味ないんだってば。



「向こうで座って、テレビでも見てて」


「この時間、サザ●さんしか見るもんねーし」


「見てたらいいじゃん」


「もうジャンケン終わった」


「だったら、もうすぐ次の番組始まるでしょ! ほんとすぐだから、待っててっ」



オタマを奪って、ナオくんの広い背中をぐいぐい押す。

手のひらに伝わる感触は硬くて、それを自覚すると同時に、熱が顔に集中する。


今の関係性にまだ慣れなくて、ふとした瞬間にドギマギしてしまうんだ。


うぅ……ナオくんは全然緊張してないのに、私だけこんなにあたふたして。

悔しいけど、これがケーケンの差ってやつなのかしら。



ナオくんをキッチンの外に追いやって、食器棚からスープボウルを2つ取り出す。

そこにポタージュをオタマで掬い入れて、……もちろん焦げが入らないよう細心の注意を払って。ドライパセリを振りかけて……よし、完成!



「もう、そっちに全部持って行っちゃっていい?」


「あぁ。運ぶのくらいは、手伝っていいだろ?」


「そうだね、お願いしようかな」
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