きみの知らないラブソング
第一章
ハッとして目を覚ました。
夢を見ていた。
すごくリアルで、すごく恐ろしい夢を。

目が覚めてもまだその感覚が残っていた。


昼休みの始まりを告げるチャイムが鳴る。
茉衣は重い体を起こした。
入学してから二日目。まだ高校生活に慣れていないこともあり、気を張っていると自分では思っている。だが、窓側の一番後ろという最高の席。四時間も座っていると眠ってしまうものだ。

「茉衣、お弁当一緒に食べよ!」

「うん、食べよう!」

クラスメイトたちはそれぞれ席を立ち、散らばっていく。今から高校生活初めてのお弁当タイム。

教室の真ん中で茉衣を呼ぶのは中学校からの親友、清水広菜(シミズヒロナ)だった。
向こうを見渡すと、何人かのクラスメイトが広菜を囲んで笑い合っている。中には男子生徒も混ざっていた。もう、友達が出来たらしい。
広菜はモデル体型のいわゆる美少女で、一緒にいるだけで気後れしてしまうほどだ。しかしそんな見た目とは裏腹に、サバサバした男勝りな雰囲気は何というか魅力がある。
すぐに友達が出来るのも当然のことだろう。

片手にはお弁当、もう片手には水筒を持ち、広菜のいる教室の真ん中まで小走りで向かっていく。
茉衣はバランスを崩した。
誰かの机に思い切りぶつかってしまったようだ。

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