きみの知らないラブソング


「おまたせ」

と声をかける。
広菜と一緒に四人のクラスメイトが机をくっつけて待ってくれていた。が、何となくアウェー感。男の子もいるなんて聞いてないし。そう思った茉衣だった。
しかし、そんな心配も束の間。よろしく、なんて声をきっかけに当たり前のように会話が始まった。なんだ。みんな温かい人だ。
茉衣は嬉しくなって思わず顔を綻ばせた。高校生活、上手くいきそうな予感がする。

「じゃあ、みんなで食べよっか!」

広菜の一言が合図のように、それぞれがお弁当を広げ始める。茉衣はすでに用意されていた広菜の向かいの席に座り、同じようにお弁当を広げる。
クラスメイトたちは食べ始める前からお互いの話をして盛り上がっていた。




茉衣はふと、斜め前を気にした。

さっきの、彼だ。



クラスメイトはそれぞれ数人で集まってお弁当を食べ始めようとしている。
そんな中、彼は未だに一人でいる。席に着いたまま読書をしているようだった。同じ中学校だった人がいないのか、いたとしても親しくないのか。


偶然ぶつかってしまっただけ。気にする必要はまったくない。そう思うものの。
茉衣は今、無性に彼のことを気にしている。
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