【短編】ホワイトデーには花束を、オレンジデーには甘いキスを(三人称)
でないと、勘違いしてしまう。課長が自分を少しで特別に想っているのではと。
半ば拉致されるように連れていかれたのはカフェ風の定食屋だった。ジムのあるビルの裏手にあるこじんまりとした店で、オフホワイトの壁にオークのテーブルや椅子、天井から釣り下がるランプ。そんな洒落た店内はスーツ姿の若い男女で埋め尽くされていた。
初めて来た佳織はあまりの混み具合に躊躇してしまったが、スタッフは常連である真佐課長を見つけると、カウンター席のお客さんに声をかけ始めた。客に隙間を詰めてもらい、空いたスペースにふたつのスツールを押し込める。そこに促され、課長は佳織をエスコートして先に座らせた。そこでようやく右手を離されたものの……今度は課長との距離がより近くなったのだ。
肩がぶつかりそうな距離、いや、肘から二の腕にかけてスーツの布がこすれあっている。課長からはジムで浴びてきたであろうシャワーの残り香が漂い、いやがおうにも佳織の鼻腔をくすぐる。
半ば拉致されるように連れていかれたのはカフェ風の定食屋だった。ジムのあるビルの裏手にあるこじんまりとした店で、オフホワイトの壁にオークのテーブルや椅子、天井から釣り下がるランプ。そんな洒落た店内はスーツ姿の若い男女で埋め尽くされていた。
初めて来た佳織はあまりの混み具合に躊躇してしまったが、スタッフは常連である真佐課長を見つけると、カウンター席のお客さんに声をかけ始めた。客に隙間を詰めてもらい、空いたスペースにふたつのスツールを押し込める。そこに促され、課長は佳織をエスコートして先に座らせた。そこでようやく右手を離されたものの……今度は課長との距離がより近くなったのだ。
肩がぶつかりそうな距離、いや、肘から二の腕にかけてスーツの布がこすれあっている。課長からはジムで浴びてきたであろうシャワーの残り香が漂い、いやがおうにも佳織の鼻腔をくすぐる。