初恋をもう一度。【完】
コンクールは1年1組からだ。

2組の俺達はのんびりしてられるのかと思ったら、舞台下の端っこに待機しなきゃいけないらしい。

先に、俺達の目の前に座ってた1組のやつらが一斉にパイプ椅子から立ち上がって、ぞろぞろと舞台袖の方に移動を始めた。

その時。

「キャッ!」

俺の目の前を通りかかった女子が、パイプ椅子ごとよろめいて、こっちに倒れそうになった。

俺は咄嗟に立ち上がって、その子の体を支える。

倒れかかったパイプ椅子は太ももで止まった。

「平気?」

声をかけたら、その子は慌てて俺から離れた。

「ご、ごめんなさいっ……」

深々と頭を下げるその子に「謝んなくてもいいのに」と返しながら、パイプ椅子を直す。

「それより、行かなくていいの? 前」

「あっ!」

頭を上げたその子は、ほっぺたどころか耳まで真っ赤だった。

その顔を見た瞬間、俺のほっぺたも、かあっと熱くなった気がした。

だって、真っ赤な顔で、くりんとした二重の瞳は少し潤んでて。

……めちゃくちゃ可愛い。

「あ、ありがとう……ございます」

その子は小さくそう言うと、少し慌て気味に舞台袖へと向かった。
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