初恋をもう一度。【完】
そのあとは、まあ大変だった。

何が大変だったって、俺が。

1組が壇上で歌ってる間ずっと、俺の目は壇上のいちばん手前に釘付けだった。

最前列の端っこに、さっきの子がいるからだ。

歌うのが好きなのか、それともすごく真面目なのか、口を大きく開けて一生懸命歌っている。

真っ黒な長い髪はツヤツヤで、色が白くて、目はくるんと大きくて、体は細くて小さい。

やっぱりすごく可愛い。

1組の歌が終わったのに、俺は舞台の反対側へと歩いていく彼女の後ろ姿に見とれたままでいた。

「おい、湊人。前」

「……あ、わり」

後ろから促されて、慌てて前に進んで壇上に上がった。

壇上からまた彼女の姿を探す。

少し遠くても、俺の目はすぐにあの子を見つけてしまうから不思議だ。

歌なんて口パクもいいとこで、俺の視線は指揮者じゃなくずっと1組の方を向いてて、とにかく酷いもんだった。

女の子を見て可愛いと思うことはあったけど、こんなことになるのは初めてで、大いに戸惑った。
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