初恋をもう一度。【完】
へえ、奈々ちゃんピアノ弾けるんだ、知らなかった。

じゃあ今度、ピアノの話でもしてみようかな。

「田崎さん、ピアノ弾けるの?」

「えっ…………あ、弾けるというか、その……」

「弾けるならお願いしたいのだけど」

「…………あ、はい……」

憂鬱そうに返事をする奈々ちゃん。

そうか、大人しい彼女は伴奏なんて目立つことはしたくないのかもしれない。

それなら俺が代わりにやってもいいけど……そう思って、でもやっぱりやめた。

だって、奈々ちゃんのピアノを聴いてみたくなったから。

どんな音でどんな風に弾くんだろう。

ビアニストを目指すすずちゃんのピアノになんの興味もないのに、奈々ちゃんのピアノを聴きたいと思ったのは、やっぱり好きだからなんだろう。
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