初恋をもう一度。【完】

そのあと油断して、奈々ちゃんの前なのにうっかり兄貴の話してしまった。

あれはちょっとやばかった。

だって、もし奈々ちゃんが『鈴木湊人』の家族構成を何らかの形で知ってたとしたら、もう完全にアウトだ。

彼女は何も言わなかったから、たぶん大丈夫だったと思うけど、さすがにヒヤッとした。

もしかしたら本当のことを話すチャンスで、でも今さら話す勇気はなかった。

嘘ついてたって知って、奈々ちゃんに嫌われたらどうしようって思ったら、怖くて言えない。

だから、兄貴の話を誤魔化すように、俺はピアノを弾いた。

曲は奈々ちゃんのリクエストで悲愴だ。

「すごい、ほんとにすごい!」

「そんな大袈裟な」

「ううん、ほんとに。 鳥肌立っちゃった」

奈々ちゃんは目をうるうるさせて褒めてくれた。
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