初恋をもう一度。【完】
渡されたスコアに仕方なく目を通す。

『アルヴァマー序曲』という曲名だった。

吹奏楽の曲のタイトルは、○○序曲がやけに多い。

その理由が前々から気になって仕方ないから、いつか誰か教えてほしい。

とリあえずスコアは受け取ったし、今日はもう帰ってもいいかな。

何より今日は、ピアノの伴奏を押し付けられて憂鬱なのだ。

そうだ、家に帰ったら早速練習しないといけない。

本当に憂鬱過ぎる。


…………あ。


そういえば、思い出した。

今わたしがいる準備室の隣、第2音楽室にも、グランドピアノが置いてあるのだ。

家は電子ピアノで、本物のピアノよりタッチが少し軽いから、できれば本物のピアノで練習して重さに慣れておきたい。

本番は、もちろん体育館の舞台上にあるグランドピアノだもの。

第2音楽室も一応わたし達吹奏楽部の活動場所ではあるけれど、めったに使われることはない。

今日もみな第1音楽室で音出ししていて、パーカッションがここ準備室に集まっている。

隣にはきっと、誰もいないはずだ。

わたしは第2音楽室に移動することにした。
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