僧侶とホストと若頭、3つの顔に揺れる恋
そんな話をした。

悠斗の声がしない、悠斗の気配がない神社。

こんなに退屈だったのか考えていると、部屋の外で足音がした。

悠斗? と襖を開けると、スーツを着た悠斗の後ろ姿が見えた。

「悠斗、今帰りか?」

「いや、スーツを数着取りに来ただけだ。また組に戻る。何もかも1からで、ホストの方が楽だな」

「涼しい顔してよく言うよ」

たった数日、会わなかっただけなのに何日も会っていなかった気がする。

「今日、親父と沖永に会ったんだが、何だかピリピリしてた。何か事があるのかもしれない。悠斗、気をつけろよ」

「わかった。ありがとう、凛子。気をつけるよ」

悠斗は笑顔で言ったけれど一瞬、悠斗の瞳が揺れた……と感じた。

悠斗の笑顔に、気のせいだったのかと思ったが不安は消えない。

あたしは悠斗の姿が見えなくなるまで「悠斗が無事でいますように」と、悠斗の後ろ姿に祈った。
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