【続】碧くんしか見てないよ


「う、うん!聞いてる!」


明日、南野高と練習試合があるみたい。


「ねえ、碧くん。明日……試合、見に行ってもいいかな?」


わたしは精一杯の勇気を振り絞って尋ねた。


わたしは碧くんに気持ちを信じてもらえた以来、サッカー部、というか碧くんをあの校舎と校舎を繋ぐ渡り廊下で観察することをやめている。


モモが青木先輩にふられてしまい、隣のクラスの告白してきた男子と付き合い始めたからだ。

さすがのわたしも一人で観察する勇気はない。


だから久しぶりに、サッカーをしている碧くんが見たい。


全力でボールを追いかける姿。


相手にボールを取られまいと集中している顔つき。


ゴールを入れたときのとびきりの笑顔。


もう1ヶ月経ったというのに、こんなにも簡単に思い出すことができる。


生でもう一度見ることができたら、すごくすごくうれしい。


わたしはもう明日、練習試合を観に行く気満々だったけれど…………


「………だめ」


「………え………?」


「紺野さんは、来たらだめ」


碧くんはまっすぐ前を向いたまま、そう言った。

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