魔法の鍵と隻眼の姫
私は大事に守られてるだけは嫌。
私が守る。
お父様もお母様もお兄様たちも、この世界も全て。
私しかこの世界を守ることが出来ないなら私は何だってする。
憎悪渦巻くこの世界を、悲しみに暮れる人々を救って見せるわ。

決意新たに駆け出したミレイアは風を受けフードが脱げると綺麗な黒髪が靡く。

「あ、おい!待てよっ!」

駆け出したミレイアを追いかけるがラミンはどんどん離されて焦る。

あいつ、意外に早い…。
そして、靡く黒髪を追いかけながら一つ、思い出したことがある。
昨日、モリスデンに肩をたたかれこっそりと耳元に囁かれた。

「ラミンよ、姫から一時も離れるでないぞ。離れればお前に災いが降りかかる。心して守れよ?」

耳元にまとわりつくように囁かれ、ゾゾゾッと鳥肌が立った。
それはまるで呪い。
あの悪夢にも似た悪寒が走る。

「おいっ!待て!俺から離れるな!」

聞く耳持たずに走り去るミレイアを必死に追いかけるが、ラミンは自分の頭上に暗雲が立ち込めているのに気付いた。
おい、なんか嫌な予感が…
ゴロゴロと唸りを上げるその雲をラミンが一瞬見上げると辺りは白く光った。

バリバリバリッ ドッドドーーーンッッ!!

「うぎゃあっ!!!!」

「えっ何!?」

光と共にすごい音がして振り返ったミレイアはラミンの悲鳴に慌てて引き返した。
離れていたと言っても100mほど。
すぐにラミンの姿を見留めたミレイアは唖然と口を開けて馬を止めた。

「ど、したの?ラミン…」

ラミンの馬のウォルナーは何事もなかったようにぶるるっと鼻を鳴らしてわずかな下草を食んでいる。
ラミンはというと、頭からふつふつと煙が上り顔は煤だらけ。
一瞬にしてくたびれた姿になってぴくぴくと口元が引きつっている。

「……あ、んの…くっそじじぃ~~~~~っ!」

腕を振り上げ雄叫びを上げるラミンに目を丸くしたミレイアは思わずプッと吹き出してしまった。

だから離れるなと言っておろう、馬鹿もんが…

モリスデンのお小言が聞こえた気がした。


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