魔法の鍵と隻眼の姫
初めて出合った時の高飛車なミレイアを思い出しふっと笑うラミン。
手で優しく涙を拭うラミンに弱り果てたミレイアは言葉を失う。

ラミンだって決して楽な旅ではなかったはず。魔物に襲われ大怪我をし原因不明の体の熱さで苦しみ旅に慣れない自分の護衛まで…。

ランプに照らされ間近に見るラミンの顔がこの上なく優しくてミレイアはどきりと胸が高鳴った。
ブルーグリーンの瞳に写る自分、今にも付きそうな鼻、零れる吐息が唇を撫で、一瞬時が止まったように感じた。

不意に目を逸らしたのはラミン。

「……今は、何も考えずに泣いて全部吐き出しちまえ。相当溜め込んで俺が想像できないくらい苦しい思いをしてたんだろ?気付いてやれなくて悪かったな。お前は我慢強いな…。」

額が離れるとまた温かい胸に顔を押し付けられ後ろに縛ってある眼帯のリボンが解かれた。
ビクッと肩を揺らし取り上げられた眼帯を取り返そうと頭を上げようとするも押さえられる。

「泣くのに眼帯は邪魔だろ?この暗がりだ、お前の右目も見えやしない。絶対に見ないから、安心して泣け」

そう言われ頭を撫でられるとミレイアはとうとう押さえていた感情が決壊した。

「うっ……うわあ~ああ~!」

声を上げ泣き出すミレイアの頭や背中を撫でながら空を仰ぐとどこまでも続く闇。
ミレイアの泣き声はその闇に消えて行く。
この世界にたった二人しかいないような錯覚に囚われぎゅっと震える背中を抱き締め誓った。

「必ず世界を救いお前も救う」

眼帯を持つ手にビリビリと痛みが走る。
確かミレイアが魔法で封印されてると言っていたが案外簡単に外せるものなんだなと思いぎゅっと握る。
この眼帯も全て終われば取ることが出来、その時ミレイアの背負っている重荷も無くなっているだろう。
ずっと求めていた守るべき者はこの腕の中にいる。
そしてこの旅は本当の自分を知ることもできるはず…。
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