魔法の鍵と隻眼の姫
人垣からやっと抜け辺りを見回すと草原の方で仲良く並んでいる馬たちを見つけ近づいていくと蹲るミレイアを発見した。

「おい、小娘大丈夫か?」

慌てて駆け寄ると顔を上げたミレイアは赤い顔をしている。
少し虚ろでラミンの顔も見ようとしない。

「熱でもあるのか?」

額に手を当てると少し熱い気がする。
連日の野宿で疲れが出たのか?それともこの人ごみでまた負の感情を吸い取ってしまったか?

今日は宿を取ってもう休んだ方がいいだろう。
ミレイアを抱き上げると小さく震えているのが感じる。
熱の上がり始めかも知れない。

「ちょっと!ラミンどこ行くのよ!」

焦り駆け寄ってくるアマンダ。

「お前踊りはもう終わったのか?」

「終わったわよ!何で見てくれないの?何でその子を抱いてるのよ!」

アマンダが怒りでラミンの腕を掴むと冷めた目で見下ろすラミンに怯む。

「こいつ熱があるんだ、早く休ませないと。悪いが離してくれ。言い伝えの話しは明日聞く」

「な、何言ってるのよ!パパが歓迎の宴をするって言ってるのよ!来ないつもり?」

「そんな状況じゃないだろう?悪いが断っといてくれ」

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

翻すラミンをなんとか引き止めたいとローブを引っ張るアマンダ。
何としても繋ぎ止めておきたい。
このままさよならなんて嫌だ!

「どうした?若いの、まさか帰ろうなんて思ってないよな?」

アマンダを追いかけて来たコジットが二人の前に立つ。

「連れが病気なんだ、宿で休ませたい」

「そうか…なら俺達が泊まってるテントに来るといい。近くに滋養に良い温泉もあるしふかふかのベッドもあるぞ。礼はその嬢ちゃんが元気になってからにしよう。それまで俺が面倒みてやる」

「は?いや、そこまでしてもらわなくても…」

「なーに、一人や二人増えたって何てことはない!俺はお前さんが気に入ったんだ!さあそうと決まれば宿へ行くぞ!」

「でかしたパパ!!」

大喜びのアマンダにガハハッと笑うコジット。
この親子は人の話を聞かない上に自分の思い通りにならないと気が済まないらしい。
ラミンははあっとため息をついてここで揉めてもしょうがないと諦めた。

「パパ、その子を持ってあげて!ラミン重いでしょ?パパの方が力持ちだから代わってもらって」

ラミンが小娘を抱いてるなんて許せない。
アマンダはラミンに仕切りにその子を離せとまとわり付いてくる。

「いや、いい。こいつは俺が連れていく。代わりに馬を頼む」

コジットが俺がもってやるぞ?と言っても譲らなかったラミンに悔しいアマンダはギリギリと歯ぎしりをしてラミンの後に付いて行った。

アマンダがラミンの事が好きなのは見ていて分かる。
だがラミンは嬢ちゃんの事が大事らしい。
コジットはアマンダの肩を慰めるように抱いた。

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