白雨の騎士
コンコン


ソフィアがアリスの部屋をノックした。


「アリス様に言われリア様の様子を伺っていましたが、やはり夫人達に嫌がらせを受けたようです」


ソフィアの言葉にアリスは深く溜息をついた。


「私が出る間も無くシドが止めに入ってくれました」

「シドが?」


「ええ。その後すぐにアラン様が来てくださいました。」

アリスは少しホッとした表情をした。


「リアには専属の護衛が付かないから心配してたんだけど、予想通りね…ソフィア、その夫人達に暫く私のサロンには来ないよう伝えておいて」

アリスは腕を組んで深くソファーにもたれかかった。


その夜、舞踏会が終わった後にアランがアリスの部屋にやって来た。


「…アラン、リアは落ち着いた?」

アランは窓際に置いてある水指を手に取った。

水をぐいっと飲み干すと乱暴に袖で口を拭った。


「聞いたのか。とりあえず落ち着いた。これだから王宮は嫌いだよ」

アランはため息をつくと椅子に腰掛けた。


「…どうして戻って来たの」

アランはずっと王宮での生活を嫌っていた。

「…母上が体調が悪いと知らせがあったんだ」


「え…アランのお母様が?知らなかった…」


「そろそろ帰らなければいけないとは思っていところだったからな。リアにはこれこからも辛い思いをさせるかもしれない」

珍しく弱気なアランを見てアリスはポンっと背中を叩いた。


「アランが守ってあげるしかないのよ。」


すると、いつものようにアランはふっと笑った。


「…分かってるよ。それより、あの近衛隊には感謝するよ。よく機転が効く。」


「シドね。そうね…彼は細かいところにもよく気がつくわ」


そう言うアリスの顔をアランはじっと見つめた。


「なんだ、アリスはあの近衛隊が好きなのか。」




< 179 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop