白雨の騎士
「…そうか。この国を出て行くか。」


マリアは国王の部屋へ来た。

国王は暫く黙り込んだ後、立ち上がり窓から外を眺めた。


「…アリスには話したのか。」


「はい…ここに来る前に。」


「そうか。」

マリアの言葉に国王は表情を歪めた。


「…分かった。しかし、今日国を出たら二度と戻って来る事は出来ない。エルドやアリスとも会う事は二度とない。その覚悟は出来ているか?」

国王の言葉にマリアはぐっと手を握りしめた。


「…自分勝手だと重々承知しています。その覚悟の上で、ここへ参りました。」


国王は深く頷くと机から指輪を出しマリアに差し出した。


「これは…」



「お前の母の形見だ。先ほど、エルドが渡すようにと置いて行った。」

マリアは驚き指輪を手に取った。


「…ここへ帰って来る事は出来ないが、たまにはアリスに手紙を出してくれ。アリスはお前を本当の姉のように慕っていた。」


マリアは目に涙を浮かべて頷き、指輪を握りしめた。


「…アリスは今一人か?」


「いえ…私の護衛をしていた近衛のシドと一緒です」


「そうか。」


「彼と一緒なら、きっとアリスも大丈夫だと思います。」


マリアは小さく呟いた。


そして指輪を大事にしまうと、国王に頭を下げた。



「…この国の行く末を祈っています」
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