白雨の騎士
エルドが出て行き、温室に沈黙が流れた。


「…ごめんね。久しぶりに帰って来てこんなことになって。」

マリアは涙をぬぐい、アリスに頭を下げた。

頬は赤く腫れていた。

「…ううん。今夜、行くの?」


「うん。国王に挨拶に行った後で。」


アリスはマリアの手をギュッと握りしめた。


マリアは優しく微笑み、アリスを抱きしめた。


「…ごめんね。私ばかり自分勝手に生きて…」


マリアの胸の中でアリスは涙を流した。


それだけ言うと、マリアは国王の元へ向かって行った。



温室にアリスとシド二人きりになった。


アリスはその場にガクンと膝をつくと静かに涙を流した。



シドはどうしたらいいか分からず、そっとアリスの隣に膝をついた。


「…マリアは昔から何でも知りたがって、外の世界にずっと憧れてた。私はこの王宮で信頼できるのはマリアだけだった。留学する時も行かないでって…でも、言えなかった。。今日だって。マリアの夢を壊すようなこと、私にはできない。でも、でも…」


アリスは大きな瞳からポロポロ涙を流しながら、顔を上げてシドを見た。


「…マリアが居なくなってしまうことが、すごく悲しい…寂しい。また、私は一人きりになる…」


その瞬間、シドは心臓がズキっと痛んだ。

そして無意識に、アリスをそっと抱きしめた。


シドの胸の中に収まるアリスは驚いた表情をした。しかし、シドの心臓の鼓動が妙に心地よく、自分の手をシドの背中に回してぎゅっと抱きしめた。


温室の中、流れる水の音とアリスの泣き声が静かに響いた。
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