白雨の騎士
その日の夜、リダの優勝を祝って宴が開かれた。

リダは最初からかなりの酒を飲まされて既に酔っ払いイビキをかいて寝てしまった。


シドは出来るだけ静かに飲みたいと思っていたが、ルイや同じ時に近衛に入団した同期達に囲まれていた。


「…さぁ、酒も入ったことだ。アリス様となにがあったのか全部話せ!」

ワインの瓶を片手に、ルイもかなり酔っているようだ。


「だから、本当に何もない。」


「ったく、最初からシドに持ってかれると思ってたんだ俺は!」

ルイと同じ第2部隊に所属しているエレンが悔しそうに言った。


「まぁ実際、結婚相手の候補として入隊したが、入ってみればそれどころじゃなく毎日が忙しい。俺は最近、城のメイドといい感じなんだよな〜」

第3部隊のゼンがニヤケ顔で言った。


「…はぁ?メイドと?お前、ちゃんと仕事してんのかよ」


「してるさ!俺は来年、絶対に剣術大会に出て上位を目指すぞ。」


城の近衛として働き始めて以来、こんな風に同期と飲みながら話す事は初めてだ。

ゼンが言うように本当に忙しい毎日を過ごしていた。

ここ数年、近衛の募集はなかったが実際は人手不足だったようだ。

入団した理由はどうあれ、今や皆自分の部隊でしっかりと職務を果たしている。

シドはじゃれ合う同期を眺めながら、少しだけ嬉しい気持ちになった。


「…そういえば、アリス様は他国の王子の元へ訪問するらしい。その国の建国記念日に招かれたようだ。シド、ぼやぼやしてると他国の王子に横取りされるぞ」


「だから、そうじゃないって言ってるだろ!」


宴は大いに盛り上がり、兵士たちがやっと床についたのは朝方だった。
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