偽物の恋をきみにあげる【完】

満月がほんの少しだけ欠けた月の夜。

『会いたい』

きみはぼくに言った。

いつか言われることはわかっていた。

「それはルール違反だよ」

しんとしたぼくの部屋に、カタカタとキーボードの音だけが鳴り響く。

ぼくたちはいわゆるネカノネカレ、ネットの中だけの恋人だ。

文字だけで、言葉だけで繋がった関係。

きみはぼくがどこの誰なのか全く知らない。

『うん、わかってる。ごめんなさい』

きみがさみしいのは知っている。

ぼくもほんとうはきみに会いたい。

『でも、会いたいの』

言葉だけじゃ埋められないものがあるのを、ぼくもきみも、もうじゅうぶん過ぎるほどわかっていたのだ。
< 120 / 216 >

この作品をシェア

pagetop