偽物の恋をきみにあげる【完】
満月がほんの少しだけ欠けた月の夜。
『会いたい』
きみはぼくに言った。
いつか言われることはわかっていた。
「それはルール違反だよ」
しんとしたぼくの部屋に、カタカタとキーボードの音だけが鳴り響く。
ぼくたちはいわゆるネカノネカレ、ネットの中だけの恋人だ。
文字だけで、言葉だけで繋がった関係。
きみはぼくがどこの誰なのか全く知らない。
『うん、わかってる。ごめんなさい』
きみがさみしいのは知っている。
ぼくもほんとうはきみに会いたい。
『でも、会いたいの』
言葉だけじゃ埋められないものがあるのを、ぼくもきみも、もうじゅうぶん過ぎるほどわかっていたのだ。