偽物の恋をきみにあげる【完】
でも、その日も次の日も、大雅からの連絡はなかった。

送ったメッセージに、既読すら付かない。

どうしたんだろう……。

ひょっとして、何かあったのでは?

急に不安になって、どうにか連絡を取りたいと考えて、そうしてやっと気づいた。

私は、大雅のことを何も知らない。

彼の携帯の番号も、彼の家も、仕事先も。

私は大雅と、このトークアプリでしか繋がっていないのだ。

一体どうしたらいいのだろう。

返事がないのは少し心配だし、それに何より、妊娠のことがあるし……。

週末の3連休が明けても、依然として大雅と連絡が取れない。

困り果てた私がなんとか絞り出した策は、駅で待ち伏せすることだった。

大雅が仕事に出ているのであれば、職場近くの駅で待っていれば会える筈だ。

仕事で同じ駅を使っていたから、私達は再会できたのだ。

かなり早朝から、仕事に間に合うギリギリまで駅で待ち、そして定時退社後も、かなり遅くまで待つ。

それを3日間やったけれど、大雅に会うことはできなかった。

寒空の下で連日こんなことをしたから、軽く風邪を引いた。

もちろん未だに、メッセージは未読のまま。

帰りにコンビニに寄ったら、チョコが半額だった。

そういえば、今日はバレンタインデーだった。

あげる相手が行方不明のまま、終わってしまったけれど。

さむっ……。

半額チョコをかじりながら、家に帰った。
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