偽物の恋をきみにあげる【完】
◇◇◇◇◇
~半年前・病室~
「俺に遠慮せず、再婚していいからねー」
婚姻届に印鑑を押しながら、大河は言った。
「大河……そういうのやめてよ」
「んー。ま、どうせ月奈にはムリだろうけど」
「え、ムリってなに? 再婚が? なんで!」
「だって、ねえ? ……ププッ」
「ちょ! どこ見てんの? おっぱいの大きさは関係ないから!」
「いや、あるだろ。大いにある」
「もう! バカ大河」
……まあでも、再婚はほんとにできないかもな。
だって、アンタほどのイイ男は多分いないもの。
大河は世界一イイ男だよ。
そんなことは、悔しいから言ってあげない。
「あ、ここで一句」
大河はいたずらっ子のような顔で言った。
「なに? 『悲報です、月奈のおっぱい、ちっちゃ過ぎ』とか言うんでしょ」
「まあそりゃ悲報ですな」
「……いっそ豊胸しようかな」
「あはは。てか月奈、聞いて」
大河は急に、とても愛おしげに私を見つめた。
「嬉しいな、可愛い月奈が、俺の嫁」
「……そんなこと言われたら……再婚しづらい」
「だって再婚して欲しくねーもん」
「……なにそれ、さっきと違うし……」
「あはは、ま、今は俺のじゃん?」
大河は楽しそうに笑って、情けなく涙を流す私に優しくキスをした。
「めちゃくちゃ愛してるよ。俺の奥さん」