偽物の恋をきみにあげる【完】

◇◇◇◇◇

~半年前・病室~


「俺に遠慮せず、再婚していいからねー」

婚姻届に印鑑を押しながら、大河は言った。

「大河……そういうのやめてよ」

「んー。ま、どうせ月奈にはムリだろうけど」

「え、ムリってなに? 再婚が? なんで!」

「だって、ねえ? ……ププッ」

「ちょ! どこ見てんの? おっぱいの大きさは関係ないから!」

「いや、あるだろ。大いにある」

「もう! バカ大河」

……まあでも、再婚はほんとにできないかもな。

だって、アンタほどのイイ男は多分いないもの。

大河は世界一イイ男だよ。

そんなことは、悔しいから言ってあげない。

「あ、ここで一句」

大河はいたずらっ子のような顔で言った。

「なに? 『悲報です、月奈のおっぱい、ちっちゃ過ぎ』とか言うんでしょ」

「まあそりゃ悲報ですな」

「……いっそ豊胸しようかな」

「あはは。てか月奈、聞いて」

大河は急に、とても愛おしげに私を見つめた。


「嬉しいな、可愛い月奈が、俺の嫁」


「……そんなこと言われたら……再婚しづらい」

「だって再婚して欲しくねーもん」

「……なにそれ、さっきと違うし……」

「あはは、ま、今は俺のじゃん?」

大河は楽しそうに笑って、情けなく涙を流す私に優しくキスをした。

「めちゃくちゃ愛してるよ。俺の奥さん」

< 198 / 216 >

この作品をシェア

pagetop