偽物の恋をきみにあげる【完】
そこから先は、あまり覚えていない。

折角だから飲みに行こうか、という話になって、その辺のバーに入った気がする。

きっと10年ぶりの再会で、私は舞い上がってしまっていたのだろう。

ただでさえ酔っ払っていたのに、そこからまた勢いよく酒を煽ったせいで、バーでどんな話をしたのかも殆ど覚えていないのだ。

昔と変わらない笑顔だとか、綺麗なアッシュグレーの髪だとか、ジッポライターで煙草に火をつける仕草だとか、そんなことが断片的に記憶にあるだけ。

私はすっかり泥酔していたのだと思う。

だから、何がどうなったのかわからない。

気づいたら私はラブホテルのベッドの上にいて、大雅に抱かれていた。

情けないことに、その行為の記憶さえも朧げだ。

翌朝、恥ずかしさと少しの気まずさと、二日酔いによる体調不良の中、そそくさと身支度を整えてホテルを出た。

でも別れ際、大雅が私に言った。


「次いつ会える?」


10年前、ただの片想いのまま何もできなかった初恋が、突然ハッピーエンドに向かい始めた。

そう思ったのだ、あの時は。
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