偽物の恋をきみにあげる【完】
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週が明ければ、また仕事の日々。

私が勤めるのは、まあそこそこ大手の複写機、所謂コピー機のメーカーだ。

「おはようございます」

挨拶をしながら入ったフロアにいつもとは違うそわそわした空気を感じて、私は首を傾げた。

主に女子社員達から、妙に浮き足立ったようなひそひそ声が聞こえてくる。

その理由は、すぐに始まった朝礼で明らかになった。

「ええ、年明けから新しいプロジェクトを立ち上げることになり、我が企画部に、本社から新たな人員が加わります」

支社であるここと本社の企画部の業務を統合し、低迷する国内の売上アップをはかる新プロジェクト、だそうだ。

まあ要するに、海外担当であるうちの企画部に、本社の人が来て国内の仕事を持ち込むということだろう、たぶん。

とばっちりで私の業務が増えないか少し心配だ。

定時上がりがこの職場の最大の魅力なのに。

「先立って、チームリーダーとなる本社の喜多野《 きたの》課長にご挨拶いただけるそうです。ではお願いします」

……成程ね。

喜多野と呼ばれたその男性に目をやり、女性社員が浮ついていた理由を把握した。

「喜多野《 きたの》幸太郎《 こうたろう》と申します。正式に異動になるのは来月頭ですが……」
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