偽物の恋をきみにあげる【完】
昼休みの社員食堂は、当たり前のように喜多野課長の話題でもちきりだった。

「喜多野課長、かっこよくないですか!?」

「イケメンだよねー」

「しかも、デキル男って感じ!」

私はカツカレーを食べながら、うんうんと頷く。

スラリと背が高くて、整った顔立ちに縁の細い眼鏡をかけた、所謂インテリ風イケメン。

年は30代前半、と言った所だろうか。

いやしかし、外見より気になるのは名前。

きたのこうたろう……まるで北瀬虎太朗、コタローくんみたいだ。

「及川さんもああいうの好み?」

「え、私ですか? そうですねえ…………あ、すいません」

答えようとしたら、傍らのスマホが震えた。

『今日の夜、行ってもいい?』

差出人は大雅。

彼からのお誘いは、大抵こうして当日に来る。

しかもいつもお昼時だ。

向こうも昼休みなのかもしれないが、真っ昼間にセックス誘われる私の気持ちも考えて欲しい。

と思いつつも「いいよ」と即答する。

外せない用事がない限り、私は仕事後に予定なんて入れない。

彼が来る曜日はランダムなので、いつ来てもいいように、私は常にスケジュールを空けているのだ。

たかがセフレのために。

『じゃ、いつも通り駅で』

「りょーかい」

『あっ! 今日俺、カレーくいたい』

カレー!? 嫌がらせなの?

続けて入ってきたメッセージを見て、今口に運んだカレーをマーライオンしそうになった。
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