偽物の恋をきみにあげる【完】
食事を終えると、私達はまた下に降りて、正面玄関前のクリスマスツリーを見に行った。

ツリーの周りは、沢山の見物客で賑わっていた。

「うわー、カップルだらけ!」

手を繋いでいたり寄り添っていたり、仲睦まじいカップルだらけの様子を見て、私は声を上げた。

「俺らだってカップルじゃん」

「まあね、ゴッコだけど」

ツリーが放つ、薄紫色の眩い光に目を細めながら私が言えば、

「ふっ、その話覚えてねーくせに」

大雅はそう笑って、私の手をそっと握った。

少し驚いて顔を見上げると、

「いや、カップルらしくしようかなと」

そんなことを真面目な顔をして言う。

「そういえば大雅、恋人ゴッコなのに、私と手繋ごうとしなかったよね。なんで?」

「……だってそんなん、ちょー照れるじゃん」

「何言ってんの、バカなの?」

キスやセックスは平気でするくせに。

コイツの頭は、きっとどうかしているのだ。

まあ、そんなコイツの手を離せない私も、相当頭がおかしい。

ツリーから放たれる、薄紫の光の洪水。

偽物の恋人と見るその光景は、泣きたくなるくらいキラキラと美しくて、確かに目の前にあるのに、やっぱり儚い夢みたいだった。
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