偽物の恋をきみにあげる【完】
最上階の24階でエレベーターを降りて、鉄板焼きのお店に入った。

落ち着いた高級感溢れる店内、大きな窓一面に、東京湾の夜景。

職場のすぐ近くなのに、まるで非日常だ。

スパークリングワインで乾杯をする。

「えっと、メリークリスマス?」

大雅が少し照れたように言って、私は

「1日早いけどね」

と笑ってグラスを合わせた。

クリスマスディナーと銘打ったコース料理は、とても豪華だった。

伊勢海老だの穴子の白焼きだの佐賀牛だのが目の前の鉄板で焼かれて、どれもたまらなく美味しかった。

でも大雅は、どれも7割くらいしか食べず、残りを全部私にくれた。

嬉しいけれど、お陰で満腹過ぎて苦しい。

そういえば、大雅は少食だ。

ガツガツ食べるのを見たのは、それこそこの間のカレーくらい。

10年前はむしろ、食いしん坊なくらい食べていた気がするのだが。

「もうじじいだから、そんな食えないの」

大雅はそう言って笑うが、男性の25歳なんて食べ盛りなのでは? と思う。

ダイエットでもしているのだろうか、少し細すぎるくらい十分スリムなくせに。

食べ過ぎてぽっこり出ているお腹が、とてもプレッシャーだ。
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