無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
「ナタリー、アレクシスはどこかな?」

ナタリーが廊下を歩いていると後ろから声がかかり、振り返ると遊びに来ていたユアンが立っていた。
ナタリーがお辞儀をするとユアンは、堅苦しいのはいいよ。と笑う。

「それで、アレクシスは?」

「殿下なら今は中庭にいらっしゃるかと」

「中庭?珍しいね」

いつも執務室にいるのに。と言うユアンにナタリーは案内しながらくすくす笑う。

「今、中庭には殿下の“癒し”がいますから」

「“癒し”……?」

あちらです。とナタリーが示した先には小動物に囲まれて若干戸惑っているアレクシスと、傍らで柔らかく微笑むティアナがいた。

「……戸惑ってるように見えるけど、癒されてるの?
それより、アレクシスの傍にいる女性ってーー」

言いながらユアンは目を見開いた。
ティアナがアレクシスの肩にリスを乗せ微笑んだその顔を、アレクシスが傍目にはわからないだろうが見たこともないくらい柔らかい表情で見つめていたからだった。

「あー……。
なるほど、“癒し”だね」

「はい、“癒し”です」

ナタリーに気づいたティアナは小さく手を振るが、その隣にいる人物に大きく目を見開いた。
フライハイト国民なら知らない者などいない自国の王子、ユアン殿下だったからだった。

「どうした?」

ティアナの様子にアレクシスは視線を追い振り返る。
そこには、にこやかな顔のナタリーとニヤニヤしているユアンが立っていて、アレクシスは明らかに嫌そうに顔を歪めた。
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