無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
ティアナが講義に現れずどこを探しても見つからないと報告を受けたのは元ブリュッケル公爵領の立て直しを図る会議中だった。
会議を抜けるわけにもいかず出来る限りの人員を集めて捜索するよう伝えると、眉を潜めながら雨が降り続ける外を窓越しに見た。

早めに会議を終わらせると、厩舎でずぶ濡れになって倒れていたティアナを発見し部屋で寝かされていることを知らされその足でティアナの部屋へと向かいそのまま寝室へ入る。
荒い息を吐きながら魘されている彼女の汗ばんだ額にかかる前髪を払い、そっと手を乗せると掌ごしに体温の熱さが伝わってくる。
上気した頬に息苦しそうに上下する胸を見て唇を噛み締めた。

ティアナの様子がおかしいと聞いたときにはすでに体調が悪かったのだろう、アネッサになど関わらずに会いに来ればすぐに気づいてあげられたはずだと後悔するが遅かった。

だが、解せないのは何故雨に打たれた状態で厩舎にいたのかだ。
雨の中外に出ることは今までなかったし、軍馬として訓練中の馬がいる厩舎に許可なく立ち寄ることも今までなかった。

じっとティアナを見下ろすと小さく口が動いているが、あまりにも動きが小さすぎて読み取れなかった。

「ティアナ……」

一度だけ額に口付けてからそっと離れる。
二つ目の儀式に備えた仕事が山ほどあり、これ以上ここにいる時間はなかった。
名残惜しく感じながら寝室を出て、真っ直ぐ前を見つめて歩き出した。
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