無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
実際、ティアナの使用人受けはよかった。

食事をだせば無表情で食べる貴族達とは違い、本当に美味しそうに顔を綻ばせて食べてくれる。

すれ違うときに頭を下げれば、必ず下げ返してくれる。

身の回りの世話をしたときには必ず“ありがとうございます”と書かれた紙を見せて感謝してくれる。

全てがしてもらうのが当たり前だと言った態度の貴族達とは違う。
婚約者候補として偉くなった気になって態度が変わる平民とも違う。

なにより、中庭を通ったときに見かける動物達に囲まれたティアナの柔らかい笑顔は、日頃の怒濤の仕事量に疲れつつある使用人達にとっても癒しとなっていた。

動物に好かれる人間に悪い人はいない。

そんな言葉の現れのようなティアナは使用人達に快く受け入れられ誠心誠意を持って尽くされるようになったのだが、当の本人であるティアナは日々困惑していた。

【居心地が悪いです】

最近日課になりつつある中庭への休憩にやってきたアレクシスは、申し訳なさそうに訴えるティアナに目を丸くした。
< 21 / 218 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop