無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
「何か不便なことがあるのか?」

【いいえ】

「使用人の態度が悪いか?」

【いいえ】

アレクシスの言葉全てにティアナは首を降る。
なら何故居心地が悪いなどと思うのかと、アレクシスがじっとティアナを見ていると、ティアナは言いづらそうに口を開いた。

【みなさん、とてもよくしてくれます。
……よくしてくれすぎて、居心地が悪いです】

「?」

言っている意味が理解できないのであろうアレクシスは、わからないと言うように眉を潜める。
ティアナは意を決して、王宮に来てからの今までをアレクシスにぶつけた。

【私はどこにでもいる平民です。
なのに、まるで偉い人のように様付けで呼ばれたり、いろいろな事をお世話されるのはとても申し訳なく思います】

「だが今は婚約者候補としてここにいる。
それが普通なのではないか?」

【確かに、今は候補者として過ごさせてもらってますが……でも、それだけの普通の平民です。
深々と頭を下げられるのも、細かいことまでお世話されるのも慣れていません。
出来れば普通に接してもらい、仲良く過ごさせてもらえればと……】

言いながらどんどん顔が下がっていってしまう。
使用人達の誠意がわかっているからこそ、自分が我儘を言っているのではないかと思ってしまったからだった。

「……わかった。
ティアナがそう感じるなら、みなに伝えてみよう」

アレクシスの言葉にティアナは安心したように微笑む。
その日のうちにアレクシスから伝えられたティアナの言葉は、使用人達からの好感度をさらに上げることになったのをティアナは知らなかった。
< 22 / 218 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop