あの日勇気がなかった私たちは~卒業の日~
ーーー時間の流れは速い。年をとれば余計に早く感じる、昔はそんなこといわれても信じていなかったけれど今はその通りだと思う。

あっという間に時間は流れ、センター試験当日となってしまった。
昨日までずっと教室で一ノ瀬くんと二人、勉強してきたけれどその成果を無事に発揮できるだろか。

今日センター試験を受ければ、来週はもう第一志望の入試日だ。


センター試験会場のとある大学の前で私は深呼吸をした。特に仲のいい友人、莉子と愛はセンター試験を受けないから今日ここにはいない。

何かの行事があれば必ずと言っていいほど莉子か愛が横にいた。でも今日だけじゃなく、卒業してしまえばそれも日常ではなくなる。

(今はとりあえず目の前のセンター試験に集中。二人も応援してくれているんだから)


もう一度深呼吸をして私は大学の中に足を踏み入れた。



単語帳をずっと見ている人、友達と問題を出し合っている子、はたまた全く関係のないドラマの話をしている子、緊張をほぐすために音楽を聴いている子・・・

高校の教室の倍はあるこの教室には、沢山の人がそれぞれのやり方で試験開始までの時間を潰していた。


私は指定された席に着き、莉子からもらった合格祈願のお守りを握る。

ーーー澪はずっと独学で頑張ってきたんだから!自信を持って解いてきて!!

昨日言ってくれた莉子の励ましが私に力をくれる。

(さあ、やろう)
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