仲直りの数式
その日は、三角形の合同条件と相似条件をを書いていた。

「三角形の合同条件と相似条件を書いてるの!合同条件は、三組の辺が同じ、ニ組の辺とその間の角が同じ、一組の辺とその両端の角が同じこと!相似条件は、三組の辺の比が同じ、ニ組の辺の比とその間の角が同じ、ニ組の角がそれぞれ同じこと!」

百合は何を言っているのかわからない、と言いたげな目で私を見る。

「それ…算数?」

「数学!中学校や高校で習う教科!でも、数学って算数よりも身近にあるものなのよ!だって数学の難しい数式がなければ、インターネットも計算機も存在しなかったんだから!」

私が熱くそう言うと、百合は「何それ〜」と笑う。

そして、「友達になってほしい」と言われたのだ。私は、「あんたがそう言うならなってあげてもいいわよ!」と照れながら言ったのを覚えている。

それから、百合に算数を教えてあげた。中学校に入ってからは数学。

楽しい……っていうのはちょっとだけね!ちょっとだけよ!?



中学校の確率の勉強をした時に、先生がコインを持ってきたことをふと思い出す。

二つあるコインが表と表を向く確率は、四分の一。

樹形図が示すのは四つ。表と表、表と裏、裏と表、裏と裏。

私と百合は今、裏と表で反対の方向を向いているんだと思う。
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