スイート ジャッジメント 番外編

 背後から、わっと盛り上がった声が聞こえたので振り返ると、隣のコートで試合をしている吉沢くんがシュートを決めた様だった。それに気を取られていたら、黄色い歓声が響いて、視線を戻せばゴール下に走り込んだ湊がレイアップシュートを決めた。相変わらず……凄い歓声だ。

「瀬川さん、今日も静かだねぇ」

「……ああいう声、出ないから」

 それでも、ちゃんと応援はしているつもりなんだけどな、と湊を見ていると湊と目が合って、微かにその口角が上がるのが見える。そんな表情の微かな変化にも気付けるのは近くで見ているからで、やっぱり嬉しい。

 猫みたいだ。サッカーをしている時は、大型犬みたいに思ったけれど、バスケをしている湊は、豹とかチーターとか、靱やかで大きな猫みたい。なんでだろう。サッカーよりも、飛んだりするのが多いからかな?

「静かだけど、ガッツリ桜庭見てるよね」

「それは、まぁ……」

 そんなことを指摘されるなんて思ってもいなくて、頬が熱くなった。凄く恥ずかしいけれど、湊しか見ていない事は全く否定出来ない。ボールを持ってても持ってなくても、湊ばかり追ってしまう。

 戦況はというと、湊のクラスが前の試合で消耗しているのも手伝って、接戦だ。

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