指輪
僕の昔話話を聞いてくれるかい?
僕の人生のでいちばん大切なのことを...
何年も大切に着られてきたスーツ。
その内側にあるポケット、僕は何ヶ月もその中にいた。
僕を買ったのは、いたって普通のサラリーマン。
彼、付き合って5年になる可愛い彼女がいたんだけど。
その子に僕をプレゼントしたかったみたいなんだ。
彼はすっごく良い人なんだよ。
けど少しヘタレでさ...
彼女に渡せないまま何ヶ月も僕をしまっていたんだ。
でも彼女の25回目の誕生日。
彼はついに勇気を出した。
「...た...大切な話があるんだ。」
オシャレなイタリアンレストラン、シチエーションは完璧だ。
「なに?」
彼女がこっちを向いた。さあ行け!
「君の声が好きです。」
「優しさが好きです。」
「笑顔が大好きです。」
「一生幸せにします。...僕と...」
彼が内側のポケットへ手を伸ばした...
「結婚してください!」
そう言って彼女の前へ僕をさしだした。
彼の手が汗ばんで震えている。
僕まですごく緊張したよ。
返事がなかなかないので心配になったけど、
彼女は泣きながら...
「...こちらこそ」
「よろしくおねがいします...っ...」
って笑ったんだ。
顔を真っ赤にして、涙でメイクが落ちてきちゃってる。
でも、彼女の笑顔はとてもキレイで幸せそうだった。
どうだった?僕のとっておきの話。
あの後、2人は豪華な結婚式を挙げて新居を買った。
そのため、彼はいっそう仕事に励んだ。
そのせいであまり家には帰って来れなくなってしまったんだ...
あまり話せなくなるとお互いの気持ちわからなくなっちゃうよね。
彼は仕事以外にも遅くなることがあるみたい。
彼女は僕を置いて今日も出かけていく...
けどね、僕は思うんだ。
あの時の2人の気持ちは絶対本物だったんだ。
それは 僕が一番知ってるよ。