溺れろ、乱れろ、そして欲しがれ
何度か連れて来られた見知ったバー。

静寂を打ち破るように、東雲さんが口を開いた。

「こうして飲むのもずいぶん久しぶりだな」

「そうですね。」

目の前に置かれたグラスを手に取り、シャンディガフを一口含んだ。

ゴクンと、喉を通る音がやけに響く。

変な緊張感がじわじわと手のひらに集まって、汗を誤魔化すように両手でグラスを包んだ。

「な、なんですか?」

刺さる視線に声が上擦ってしまう。

「んー、、、居心地いいなと思って。」

「まあ、東雲さんは常連みたいですからね。」

「いや、お前といるのがさ」

甘っ。甘すぎる。

なに?このベタベタな雰囲気は。

返答に困るようなこと言わないで欲しい。

「こら、うつむくな。」

うつむいたことで髪で隠れた顔。

動揺してるのが見えなきゃいい。

そう思ったのに、、、

髪に指を絡めながらかき上げられた。




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