溺れろ、乱れろ、そして欲しがれ
向かい側に座る東雲さんを盗み見る

何を考えて、何を思って生きてるんだろう。

整った顔も伏せ目がちな表情も、まるで人形みたい。

周りとワイワイ話すとこも見たことないし、誰かと仕事帰りに飲みに行く姿も見たことない。

唯一、棚橋さんと帰るとこは何度か見たことがある。

もっと、フレンドリーになればモテるだろうに。

パソコンに視線を移して、資料作成の続きをし始めた。

「ねぇ、楢岡さん、今夜暇?」

「え?あー、うん。どうしました?」

隣のデスクで同じく作業中の梶谷さんが、小声で話し掛けてきた。

また恋バナかな。

「ちょっと、相談したいことあって、、、」

「じゃあ、仕事終わったらご飯行きます?」

「そうと決まれば早く終わらせないと、」

なんだか嬉しそうにはにかむとまた向き直った。

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