溺れろ、乱れろ、そして欲しがれ
最上階に到着して、反撃も不発に終わってしまった。

もう、もう、何なの?

私もいちいち反応するな。

こうなったら高いツマミ食べてやる。

大人の雰囲気が漏れるバーラウンジ。

私には幾分、気が引けるほどだ。

質のいいソファーにガラスのテーブル。

運よく空いていた窓際の席を選んだ。

11月半ば。

金沢は雪国だから、夜空に夜景も映える。

向かい合って座るもんだと思ってたのに、何故かこの人は私の隣に躊躇いもなく腰をおろした。

「なんでわざわざ隣ですか?」

「隣にいたいから」

またそういうことをしれっと言うんだから

こっちが恥ずかしくなる。

なに考えてんのか分かんないし。

でも、近すぎる。

「明日、何時出発だっけ?」

「11時の新幹線に乗りますよ。ここを10時に出れば間に合うかと。」

「じゃあ、少しくらい潰れてもいいか」

「ダメですよ。潰れたら連れて帰るの大変ですから。」

「俺じゃなくて、お前が。」

「なんで、私が潰れるんですか」

「乱れたとこ見たいと思って」

< 73 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop