嘘つきは恋のはじまり
カウンター席に隣同士座ってカフェオレを飲むと、控えめな甘さとミルクが口いっぱいに広がった。

「それにしても驚いたよ。」

カップを置いて、だいちゃんが口を開く。

「私もびっくりしたよ。いつから気付いてたの、私のこと。」

「うん?酔っぱらいに絡まれてるとき、かな?」

「ええっ!」

「何か咲良に似てるなぁって。でも咲良、大人になって綺麗になったから、本当に咲良か自信が持てなくて言えなかった。」

そう言って、だいちゃんは私を見てハニカミながら笑う。
とたんにボボボっと頬に熱が集まるのがわかった。
ハニカンでしまうのは私だ。
綺麗になった、とか。
そんなドキドキすることをさらりと言われて、私の胸は高鳴るばかりだ。
動揺を悟られる前に、私は話題を変える。

「え、えっと。だいちゃん名字変わったの?」

「名字のこと、よく覚えていたね。」

「そりゃそうだよ。だって、だいちゃんとけっ…。」

言いかけて、私は咄嗟に口をつぐんだ。

“だいちゃんと結婚したら桜井咲良になるの。さくらがいっぱいなの”

子供の頃の無邪気な発言。
それを大人になった今、本人を目の前にして言うのはなぜだか躊躇われた。
急に黙った私に、だいちゃんは首を傾げる。

「あ、えーっと、だいちゃんと結構遊んでたじゃない?そりゃ名字くらいちゃんと覚えてるよ。」

「そっか。ま、俺もちゃんと咲良のフルネーム覚えてるしなぁ。」

だいちゃんは何の疑いもなくうんうんと頷く。
私はこっそり胸を撫で下ろし、ちらりとだいちゃんを見る。

昔も私より背が高かったけど、今もやっぱり背が高くて、でも面影も残っていて、そしてかっこいい。
笑ったとき目尻が下がるのも変わってないけど、すごく優しい雰囲気が伝わってくる。
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