フェイク×ラバー
遠慮なしに現実を突き付けてくる鷹臣を睨んではみたものの、やっぱりこれも事実だからどうしようもない。
「どうせその場しのぎの彼女役なんだし、誰でもいいだろ? 同僚にでも頼んでみたらどうだ? より取り見取り、喜んで引き受けてくれると思うぜ」
「簡単に言うな」
鷹臣の言う通り、彼女役は誰でもいいのだ。条件さえクリアしていれば。
はじめが彼女役に望むことはひとつだけ。──後腐れが残らないこと。
ただそれだけ。欲を言えば社外の子が理想。
社内の女子社員に彼女役なんて頼んだら、後々面倒なことになるのは目に見えて明らか。自ら問題を抱え込むような真似はしない。
「ま、誰を選ぶのかを決めるのはお前だし、オレは何も言わないけど、〆切が近いのだけは自覚しといた方がいいと思うぞ」
「そんなこと──」
「お待たせいたしましたぁ。牛丼大盛をおふたつ、お持ちしました!」
言われなくてもわかってる、と言おうとしたのだが、はつらつとした店員の声に邪魔されてしまった。
「ごゆっくりどうぞ~」
店員が去ると、鷹臣は待っていましたと言わんばかりの大口で、牛丼を食べ始める。
だが決して下品じゃない。鷹臣の生まれを、はじめはよく知らないが、恐らく育ちは良いのだろう。話し方がどうであれ、所作の随所に品の良さが垣間見える。
「食べないのか?」
「…………食べる」
割り箸を手に、はじめも牛丼を食べ始める。馴染みの味だ。今更、感慨にふけることもない。
それに今は、牛丼よりも気にすべきことがある。
偽の彼女役をどうしたものか。
答えは出ぬまま、はじめは牛丼を食べ進める。
***
金曜日の午後八時過ぎ──。
美雪はスーパーとコンビニのレジ袋を片手に、自宅マンションの鍵を開ける。
「ただいま~、っと」
玄関に荷物を置いて、パンプスを脱ぐ。
ようやく平日が終わって、明日は念願の休日。早起きする必要がないので、徹夜しても問題なし!
美雪はバスタブにお湯を張ると、いそいそとキッチンに移動し、コンビニで買ったものを冷蔵庫にしまっていく。
特に用事も何もない休日、美雪は極力外に出ず、家の中で過ごしたいと考えているため、金曜日の夜はどれだけ疲れていても、スーパーとコンビニに寄って、食料品などを買い込む。
そうして万全の状態で休日を迎える美雪の目的はただひとつ──、
「ログインしなきゃ」
ゲーム、である。