【バレンタイン&ホワイトデーSS】【番外編】最後の夜に「愛してる」を誓って
混乱した彼女は、落ち着きなく辺りをキョロキョロと見回しながら俺の後についてきた。

さすがの鈍感でも、こういう店が気まぐれで入れるような店とは思わなかったようだ。

「神崎さん、まさか予約して――」

「してねぇよ」

本当は、今朝、電話を一本入れておいた。予約がいっぱいだと断られたのだが、俺の名前を出したところ、なんとか手配致します、とのことだった。

けっして入念にプランを練っていたわけではない。けっして。

窓側の席に案内されると、階下に広がる夜景に、彼女は「わぁっ」と声をあげた。

「神崎さん! 見てください、すごい!」

「……そうだな」

やる気なく頷いたのは、自宅から臨む景色とそこまで変わらなかったから。

とはいえ、素直に感動している彼女に水を差すのもかわいそうだろう。
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