【バレンタイン&ホワイトデーSS】【番外編】最後の夜に「愛してる」を誓って
一か月後。

その日、俺と彼女は客先に向かい、打ち合わせが終わる頃には十九時を回っていた。

帰り道、オフィス街から駅へと続く帰宅ラッシュの波に乗り、俺の一歩うしろを歩く彼女へおもむろに切り出す。

「……腹が減ったな」

「そうですね。もうこんな時間ですし――」

「お前、この後、時間あるか?」

「へっ?」

まさか誘われるとは思っていなかったのだろう、目をパチパチと瞬かせ戸惑う彼女を連れて、駅から少し離れたところにあるシティホテルに併設されたフレンチレストランへと向かう。

親父の経営傘下のレストランだ、息子である俺も小さい頃から世話になっているおかげで、それなりに顔が利く。

最上階にある店へ入ると、顔なじみのウェイターが、俺の姿を見るなり「神崎様、お待ちしておりました」と恭しく頭を下げ、席まで案内してくれた。
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